電気炉の選択方法

試料を焼成する電気炉にもいろいろなタイプがあります。そこで、焼成する試料に対してどういうタイプの電気炉を選べば効率的かつ経済的に焼成出来るのかを知っておく必要があります。ここでは主な電気炉の構造、特長を解説します、電気炉を使用する際の参考にして下さい。


電気炉の形状


箱型炉

一番多く作られている炉で、炉内が箱型(立方体)で汎用性は一番です。小型のものは開き扉ですが、大きくなれば吊り下げ式の扉となります。天井は大型のものはアーチ型にし強度を上げています。
生産用の大型炉から、卓上型までバリエーションは豊富です。
発熱体は側面のみが多いですが、仕様によっては底面、あるいは6面全てに入れることも出来ます。


ルツボ炉

上蓋式の電気炉です、試料の出し入れは上から行います。用途に応じて管状型(イラスト)、箱型があります。大きくなればピットの中に入れ試料の出し入れはクレーンを用いたりします。
焼成は側面全てにヒーターが有り、効率的で比較的均一な焼成が出来ます。


管状炉

円筒型の電気炉で縦型と横型、あるいは縦横兼用型があります。また、割形にして試料のセットを容易にしたものもあります。試料に対し周りにヒーターがあるので熱効率は良く、小型のものは、小試料の焼成や中に炉心管を入れ雰囲気焼成などに適しています。大型のものは割形にし、キャスターやレールを付けて開きやすくし、試料のセットを容易にしているものもあります。


炉底昇降式電気炉

炉底に試料を載せそれを昇降させます。比較的試料が多いとき、または試料重量が重いときなどに適しています。熱効率はよく温度分布も他の方式と比べて優れています。
中型以上の炉が多いですが、試料のセット方法や熱効率を考え、実験炉などでも用いられることがあります。


ロータリー・キルン

電気炉の中に炉心管を入れ、それを回転することによって試料を焼成します。試料が攪拌されるため焼きムラが無く、形状から粉体の焼成に適しています。
炉心管内を雰囲気にしたり、試料投入を自動化し生産炉としての使用や、卓上型のラボ用まで様々なタイプがあります。


連続炉

単一試料の大量生産に適しています。試料を投入すると出口から焼成が出来て出てきます。そのためには、炉の設計に試料の仕様、処理量、焼成温度、焼成時間、冷却時間など様々なスペックが必要です。特定試料に対して炉を設計しますので、他の試料焼成への転用は難しいです。


台車炉

比較的大型な電気炉で、台車の上に試料を載せ、そのまま電気炉に投入します。試料が大きい、重いときなどで炉内でのセットが困難な場合に有効な炉です。前後に扉を付けて自動で台車を動かす、連続炉に近い焼成方法も可能です。


温度関係

炉を選択するときに温度条件は非常に大きなウエイトを持っていますが、実際に焼成する試料に必要な温度を見極め、適正な温度を選んでください。余裕を持った温度選択は、時には非常に高価なものになってしまいます。1000℃を越える炉では、最高温度が100℃変わると価格も大幅に変わってきます。また、高温用の発熱体は高価な上、低温域(1000℃以下)を苦手とするものもあります。


最高温度

炉を選択するときのチェック項目としては、使用温度の100℃ぐらい高めの温度が設定されていれば問題ありません。カタログ記載の最高温度は、炉の上限値の温度で、この温度まで昇温しますが、発熱体の消耗は激しく実用的な温度ではありません。


常用温度

試料を焼成するために必要な温度。電気炉のカタログや仕様書などに謳われている常用温度は、連続使用可能な温度の上限値。


温度分布

炉内の温度ムラです。電気炉の場合±10℃程度が標準です。最近の炉では、高品質断熱材の使用や制御の向上で、もっとシビアな範囲でも対応できるようになりました。カタログなどに明記している温度分布は、常用温度安定後、炉の容積の60~70%です。必要以上にシビアな温度分布を要求すると価格面では不利になります。


昇温時間

使用温度までの到達時間のことです。急速な昇温は大きなパワーを必要とし、設備電力が大きくなります。また、フルパワー昇温か、プログラム昇温かでも設備電力に差が出ます。急速昇温は試料にも大きな負荷をかけますので、昇温時間の見極めは大切です。


試料、雰囲気など

電気容量は、試料焼成時のランニングコストと炉体価格に大きく影響します。必要以上の炉内寸法を選んだり、不必要な最高温度を求めず、試料焼成に最適な炉を選ぶことが大切です。炉の形状、試料の大きさ、使用温度、昇温時間など仕様をチェックし、オーバースペックにならないよう炉を選んでください。


試料

焼成する試料の材質、形状、重量と、一度に入れる個数と温度条件を確認します。これでほぼ電気炉の概要が決定できます。


雰囲気

焼成は大気中でいいのか、ガス雰囲気が必要なのかを決めます。酸化を嫌うものはもちろん雰囲気焼成となります。雰囲気焼成が必要なときは、その純度と、窒素やアルゴンガスのような不活性ガスでいいのか、水素などの還元ガスが必要なのかを決めます。雰囲気焼成には密閉容器やガス導入回路が必要となります。特に還元ガスの場合は一度真空に引いて炉内を置換する必要が有り、炉の価格は高価なものになります。また使用する雰囲気により発熱体自体の耐熱温度が低くなることもあります。


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