温度制御の方式や理論については、様々な文献、資料がありますが、ここでは初めて電気炉を扱われる方を対象に、一般的な温度制御について解説をいたします。
1.電気炉
工業炉の中で電気をエネルギー源として加熱し、被加熱物を熱処理するものを「電気炉」と称しています。電気炉は、加熱の方式によって、①抵抗式加熱、②アーク式加熱、③誘導式加熱 などに分類されますが、電気ヒーター(抵抗線)を用いて、加熱処理をするものを 一般的に「電気炉」と称します。
電熱式のオーブン等もヒーター加熱ですが、これは加熱室(槽)に攪拌用のファンがついていることが多く、最高温度は、4~500℃程度になります。電気炉と区分されるものは最高温度が1800℃(大気中)の物も有ります。 使用目的も”乾燥”というより”焼成”の用途となります。
2.温度制御の必要性
通常、ヒーターに電気を通しただけでは、温度は何度になるのか、目的の熱処理は行えるのか 、また危険はないのかなど 予想がつきません。つまり、目的の温度条件を満たすためには、ヒータに加える電気をコントロールしなければなりません。それを温度制御といい、電気炉には不可欠なものとなります。
温度制御を行うために、何が必要?
A:温度センサー
まず、制御対象となる、電気炉内の温度を正確に計る必要があります。一般的な電気炉では、熱電対と呼ばれる、異種金属を先端溶接し、その端点に発生する熱起電力を利用する温度センサーがよく使われています。(「ゼーベック効果」)しかしながら、広い温度範囲で、どんな雰囲気でも正確に、応答性、安定性もよく測定でき、しかも長寿命、そんな万能選手は残念ながら存在しませんので、それぞれの用途に応じた熱電対を選定する必要があります。(JISではK・T・J・E・R・B等の熱電対や Pt100Ω 白金測温抵抗体の規定が、あります)
B:温度調節計
熱電対で捕らえた、電気炉内の実温度を表示し、それが目標の温度と比較した結果、実温度が低ければヒータへの供給電気量を増やし、高ければ減らさなくてはなりません、 この制御を行うものが、温度調節計です。種類としては、温度表示や、内部処理から、アナログ式、ディジタル式のほか、制御方式や、精度等によって、多くの選択枝があります。また、設定温度を時間の経過と共に変化させる、プログラム機能付のものも有ります。
C:操作端
温度調節計を使うことによって、制御用の出力が出ることになりますが、一部を除いてそのままでは比較的大きな電流の流れる、ヒーター回路の加減に使う事はできません。その制御のためには電磁接触器やソリッドステートリレー、サイリスタレギュレーターなどを用います。これで、温度調節計から出る小さな調節信号によって、大きな電流の流れるヒータを制御することが、可能となります。