酸素センサーの種類と用途

酸素センサー、O2センサーとは

酸素センサー どう選べばよいのでしょうか?

  一般に酸素センサー(酸素濃度計 O2センサー)と呼ばれているものにも その用途、ターゲットとする環境(雰囲気・温度域) 必要な精度、そして測定原理の違いなどにより 様々な種類があります。

 それでは、測定対象に最適な酸素センサーの選択はどうすればよいでしょうか?


用途別

・酸欠防止(検知・監視):

 密閉された空間トンネルなどで人が作業する場合、空気中の酸素の割合が少なくなると人の健康や生命維持に重大な影響を及ぼします。

 通常の大気中には約21%の酸素(O2)が存在します。これが下記濃度まで低下すると
  19% 鉱山保安法による最低酸素濃度
  18% 労働安全衛生規則等の最低酸素濃度(活動限界)
  16% ろうそくなどの火が消えてしまう
  15%~11% 呼吸困難 7%以下では脳機能に障害が生じ錯乱状態 
  4%以下では 死に至るといわれています 。

 このような、人の生命維持に関わる監視機器としての酸素濃度計は、一般に携行できる製品や、壁掛け型タイプで その空間の酸素濃度監視を行います、そして標準でアラーム機能(ブザーや警報接点)を持つものも多くあります。

 また、その用途から 常温での使用であり、その他のガスへの考慮もさほど厳しくありません また分解能も0.1%程度で十分機能を満たします。

  *昔は鉱山などの坑道では「カナリア」が酸素センサ替わりでした。


・酸素濃度管理:

 化学工業、セラミックス、金属、などの工業熱処理プロセスにおいて酸化を嫌う工程では ppmオーダーや酸素分圧表記で表される、低酸素域の酸素濃度管理が不可欠です。また工業炉の燃焼工程においても最適な燃焼効率を得るためと酸化還元プロセスにおける酸素濃度の監視制御が 熱処理品質管理、省エネルギーの面からも重要となっています。

 さらに、これらの用途で酸素センサーは、化学反応が激しい高温雰囲気での測定という厳しい条件もクリアする必要があります。

 工業炉用途での酸素センサー選定について配慮することは
1. 温度域別、大別して
低温用・・・低温から常温付近
   中温用・・・約400℃~800℃
   高温域・・・約700℃~1400℃
2. 測定対象の酸素濃度
   低酸素領域    ・・・10^-4atmPO2 ~ 10^-25atmPO2
  一般低酸素濃度  ・・・1ppm ~ 10^-6atmPO2
   高濃度酸素濃度領域・・・0~100vol%O2
 3. 用途別に
 セラミックス部品・・・低酸素オーブン
   電子部品関連  ・・・雰囲気炉・特殊焼成炉
   金属熱処理   ・・・浸炭炉・窒化炉
4. その他
5. ユーティリティ
  電源はあるか
  基準ガスとしての空気の供給設備
  表示機器との整合性(互換性)


測定原理

 ・測定原理別では
  主に、ガルバニ電池式とジルコニア固体電解質方式その他、磁気式、波長可変半導体レーザ分光式があります。

 ・ガルバニ電池
  金(Au)電極と鉛(Pb)電極、樹脂隔膜、および電解液から構成されており、隔膜を通過した酸素が電解液に溶けることによる化学反応で酸素濃度に比例した電流が流れ、これから酸素濃度が求められます。
 その構造の簡便さから携行タイプの酸素計に採用されています。
ただし一般環境に近い雰囲気での使用に限定され、精度も±0.5%O2程度です。

 ・ジルコニア方式
 この方式の酸素センサーは安定化ジルコニアセルを使用して高温炉内の酸素濃度を測定します。
 その原理は次の通りです。
 ジルコニアセルは高温中で、酸素イオンを伝導するという性質があり、下図の様に
 酸素濃度の高い基準ガス(大気)から酸素濃度の低い炉内雰囲気へイオンが移動します、イオンが移動することで電位差が発生、ネルンストの法則により温度を係数とした起電力が生じます。

E :ジルコニアセルが発生する起電力(㎷)
T :ジルコニアセルの温度(K)
PO₂(S) :基準ガスの酸素濃度
PO₂(A) :測定雰囲気の酸素濃度
そこで酸素濃度が分かっているガスを基準ガスとして使用することで
 PO₂(A)である測定雰囲気の酸素濃度を求めることができます。
通常、基準ガスとして炉外の空気(大気)とします。
 {当社製品はジルコニア方式で直挿式となります、特長としてはセンサーにブロアーを内蔵させジルコニアセルに空気を送り込みするところにあります。*特許出願済み}

 ジルコニアセルの温度は、内蔵した熱電対により計測します。
 これらの測定値を表示器(酸素濃度計)に取込み上記ネルンストの法則に従って演算、表示をさせることで酸素濃度の計測ができます。
 また、直挿式以外に別方式として、サンプリングチューブなどで炉内雰囲気ガスを引き込み、一定温度まで加熱したジルコニアセルの電極間に電圧を加えることにより、引き込まれた酸素濃度に比例して陰極に形成された酸素拡散制限孔による限界電流が測定され、限界電流測定により酸素濃度の計測を行います。

直挿式とサンプリング式の選択ポイントは
 高温雰囲気(おおむね700℃以上)では 直接その雰囲気にセンサー部分を挿入し 雰囲気自体の熱によってジルコニアセルが加熱される直挿式がその場の雰囲気の測定が可能で、トータル精度や応答性で有利。
 中、低温雰囲気(おおむね400℃以下)では対象雰囲気ガスをサンプリングチューブで導入し、白金ヒータなどでセルを一定の温度まで加熱して酸素濃度を計測するもので、サンプル経路が長い場合など応答性や処理されている実際の温度と異なる条件での測定となります。

ジルコニア式での測定上の注意

酸素センサーの劣化・影響を及ぼすガス雰囲気での使用を考慮します。
① ジルコニアセル(固体電解質)の劣化・影響を及ぼすガス
  ・SO₂  ・ NOx  ・ HCl    ・ H₂S ・ NH₃ etc

② 白金の劣化・影響を及ぼすガス
  ・ 還元ガス(CO、H₂、ハロゲン等)の高温時による吸収で機械的劣化がすすみます。
  ・P、S、Si、As等と還元雰囲気で化合物を形成します。
  ・Cu、Pb、Zn、Cd等の合金になりやすい金属蒸気
  ・酸素雰囲気で1000℃以上(特に1300℃以上)蒸発は顕著にあらわれます。

一般的な、直挿式酸素センサーの取扱上の注意
① 持ち運び中に落下させたり、硬いものに当てたりして衝撃を与えないで下さい。
  セル本体が破損して使用できなくなる場合があります。また保護管が破損することがあります。

② 高温時には出し入れしないで下さい。ヒートショックにより破損することがあります。
  また火傷・傷害の原因となることがあり危険です。

③ 本体スリーブ部はアルミ材質で、また端子部はプラスチックでできています。
  フランジ接続部の温度に注意して下さい(70℃以下)。高温になる場合スリーブ(アルミ材)、端子部(ABS樹脂)が破損して使用できなくなることがあります。火傷・傷害の原因となることがあり危険です。

④ セルに亀裂が生じた場合、又はセル外面の白金電極の剥離によりセルが劣化します。
  劣化したセルでは正確なO₂濃度を計測できなくなります。


■ 酸素濃度管理、測定に関するご相談は、お気軽に モトヤマ までお問い合わせください。
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